メタマスク(MetaMask)は、ブラウザ拡張機能やアプリで動作する仮想通貨イーサリアムのウォレットだ。この記事では、使用開始前に確認すべきイーサ主要ウォレットの機能や安全性、メタマスクが目指すweb3.0を解説する。
Cointelegraph Japan 2022年02月19日 07:00 メタマスクとは 使用開始前に確認すべきイーサ主要ウォレットの機能や安全性
解説 仮想通貨ウォレット「メタマスク」とは
Chrome拡張機能版メタマスク。イーサリアム上で発行されたトークンを一覧で確認できる。
メタマスク(MetaMask)は、Google Chromeなどのブラウザ拡張機能を中心として動作する仮想通貨イーサリアム対応のソフトウェアウォレットだ。イーサ(ETH)の他に、イーサリアム上で発行されたERC-20トークンやNFT(Non-Fungible Token)を管理・保管できる。
Google Chrome、FireFox、Brave、Edgeに対応するブラウザ拡張機能版のほかに、iOSとAndroidモバイルアプリ版も提供している。すべて無料で利用できるのが特徴だ。
メタマスクは、仮想通貨やトークンの保管および送受金ができるだけでなく、イーサリアムブロックチェーン上に構築されたDApps(分散型アプリケーション)へのアクセスやインタラクションができるウォレットであることも重要なポイントである。
DeFi(分散型金融)やブロックチェーンゲーム、NFTマーケットプレイス等、イーサリアムを活用したサービスを利用するには、メタマスクが必須であることも少なくない。
メタマスクは、月間アクティブユーザー数(MAU)約2100万人(2021年11月時点)を誇る、イーサリアムでは最もメジャーなウォレットである。2020年に比べてMAUが38倍に増加していることも特筆すべき事実だ。
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メタマスクの開発者
イーサリアムウォレットのメタマスクは、ConsenSysによって開発・管理・運営されている。ConsenSysの創業者ジョセフ・ルービン氏は、ヴィタリック・ブテリン氏らと共にイーサリアムを開発した共同創業者のひとりとしても知られる、世界的に著名な人物である。
イーサリアムの立ち上げとほぼ同時期に創設されたConsenSysは、世界中にイーサリアムの利用を広めることを目的に、さまざまな企業やプロジェクトに対して、ブロックチェーンの導入支援やツールの開発を行ってきた。メタマスクの開発と提供は、その活動の一環である。
メタマスクは、2016年9月にGoogle ChromeとFirefox向けのブラウザ拡張機能として初めてローンチされた。ローンチ後は、イーサリアムおよびイーサリアムブロックチェーン上に構築されたDAppsの普及に貢献してきたことはいうまでもない。
2019年にはクローズドβテスト用のモバイルアプリ版がリリースされ、2020年9月にiOSとAndroid向けに正式版が一般公開されている。
メタマスクのセキュリティ
メタマスクは、安全で使いやすいイーサリアムベースのWebサービスのニーズを満たすために作られている。特に、アカウント管理とユーザーのブロックチェーンサービスへの接続を助けるために開発されたソフトウェアウォレットだ。
従来のWebサービスやスマートフォンアプリを始めとするインターネットサービスは、アカウントやそれに付随する情報はすべてサービス側にて保管・管理されている。たとえば、パスワードを忘れてしまった場合は、サービス側に連絡しリセットしてもらうといったことになる。
メタマスクでは、ユーザーのアカウントとその秘密鍵(プライベートキー)を、サイトやサービスのコンテキスト(サーバーやプログラム)から分離させて、さまざまな方法でユーザー側が管理する。
これにより、従来の中央集権型サービスに見られるアカウント情報の盗難被害にあわなくなるなど、セキュリティを大きく向上させることにも役立っているのだ。
メタマスクのアカウント管理方法は、具体的にはシークレットリカバリーフレーズ、パスワード、秘密鍵の3種類の異なるタイプのユーザー認証で構成される。
シークレットリカバリーフレーズ
シークレットリカバリーフレーズ(旧名称:シードフレーズ)は、特定の単語リストから一連の単語を精度の高い乱数で選択し、12の単語によって構成されるメタマスクのマスターキーだ。メタマスクのアカウントを作成する際に、12の単語の組み合わせが生成される。
ユーザーは、シークレットリカバリーフレーズをメモしておくことで、他のPCやスマートフォンでメタマスクを起動し12の単語を入力すると、自身のメタマスクアカウントを復活させることができる。
シークレットリカバリーフレーズは、アカウントのバックアップ用マスターキーとなるため厳重に保管・管理する必要がある。なお、Braveブラウザで生成された一部の古いものや、一部のハードウェアウォレットの中には24の単語からなるものもあるが、基本的には12の単語の組み合わせとなっている。
パスワード
パスワードは単純にメタマスクを起動するための任意のワードであり、自分自身で設定する。ブラウザ版メタマスク、アプリ版メタマスクに限らず、メタマスクを利用する際に必要なものである。もちろんパスワードも厳重に管理する必要がある。
パスワードはメタマスクのローカル環境にしか記録されていないため、万が一パスワードを忘れてしまった場合は、シークレットリカバリーフレーズで改めてアカウントを復活させて、再度パスワードを設定する以外に復元する方法はない。
パスワードを紛失し、シークレットリカバリーフレーズを忘れてしまった場合には、永遠に自身のメタマスクを復活させることができなくなり、ウォレットで管理していた資金が失われてしまうため、注意が必要だ。逆にいえば、シークレットリカバリーフレーズが他人に漏れてしまうと、簡単にアカウントを乗っ取られてしまうことになる。
秘密鍵
秘密鍵は、各アカウントに紐付けられた独自のプライベートキーである。先述のシークレットリカバリーフレーズは、そのウォレットで作成されたすべてのアカウントを含むメタマスクウォレット全体をバックアップするために使用されるが、秘密鍵はアカウント自体を管理するものであり、秘密鍵を使用することでアカウントを他のウォレットにインポートすることも可能だ。
メタマスクでは、この3種類のユーザー認証が重要であることを理解し使用していきたい。
メタマスクでは、1つのウォレットに複数のアカウントを作成できる。アカウントの切り替えは簡単で、用途で使い分けるなどの使い方が可能だ。アカウント毎に0xで始まる異なるアドレス、そして異なる秘密鍵が付与される。
メタマスクの利用シーンと機能NFTゲームやDeFiの入り口
メタマスクの主要用途は、イーサ(ETH)およびERC-20などイーサリアム系のトークンを保管・送受金することであり、仮想通貨取引所で購入したイーサを、自身のウォレットアドレスに送金することで、ローカルにてイーサを自分自身で管理することも可能だ。
そうすることで、NFTゲームのDecentralandやThe Sandbox、DeFiのAaveやCompoundといった、イーサリアム上のアプリや連動したサービスを使えるようになる。また、メタマスクに入金したイーサを使用し、決済に使用したり、イーサリアム系のNFTマーケットでNFTアートを購入したりする際の決済手段としても利用できる。
メタマスクではNFTも保管できる
メタマスクのアプリ版は、昨今流行するイーサリアム系のNFTも同様に管理が可能だ。NFTに関しては、NFTの種類によっては所有権のみの価値の移転にしか対応していないものもあるが、ファイルサイズの大きさによってはメタマスクで画像を表示することが可能なものもある。
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手軽にDEXを使える機能 MetaMask Swaps
メタマスクでは、ブラウザ拡張版には2020年10月に、モバイルアプリ版には2021年3月に、それぞれDEXアグリゲーションサービス「MetaMask Swaps」が実装された。
MetaMask Swapsは、仮想通貨取引所を介すことなくウォレット内で異なる仮想通貨をスワップ(交換)することができる機能だ。ユーザーはこれにより、労力を費やすことなく、ユニスワップやカーブなど複数のDEXの中から、最適なレートやガス代でトークンを交換できるようになった。
MetaMask Swapsでは、イーサをベースに、LUNAやDAI、LINK、UNI、AAVE、SNXほか、さまざまな仮想通貨との交換ができる。
イーサを保有していれば、MetaMask Swapsを利用することで、日本の仮想通貨取引所には上場されていない仮想通貨を、海外の取引所に口座を開設することなく交換することが可能だ。
メタマスクではガス代が選べる
イーサリアムブロックチェーンは、イーサを送受金したりNFTを発行したり購入したりする際に、ネットワークを利用するための手数料(ガス代)が発生する。
イーサリアムブロックチェーンは、1回に処理できる取引の量が決まっているため、手数料を多く支払った取引から順に処理される仕組みになっている。
メタマスクは、ガス代を「低速」「平均」「高速」の3段階で設定する。ガス代はその時々で変化するが、選択する際に目安がわかるようになっている。ちなみに、速度を上げるにつれ手数料は割高になるので、用途に合わせて適切なガス代を設定することで、ある程度はガス代の払い過ぎを抑えることができるだろう。
メタマスクで表示されるガスの価格は、イーサリアムのネットワークの混み具合で決まるため、メタマスクが決めているのではない。
メタマスクとWeb3.0
メタマスクは他のウォレットとは異なり、プライバシーの保護を第一の目標に開発されている。メタマスクは接続した先のDAppsやWebサービスが、ユーザーの個人情報に対して同意した内容以上のものにアクセスすることを防ぎながら、トークンへのアクセスや保管、交換が行える機能を提供する。
先述の通り、メタマスクがサイトやサービスからアカウントとその秘密鍵を分離していることが重要なポイントである。メタマスクを使用することで、DeFiに接続していても、来るべきWeb3.0の時代にネットサーフィンをしていても、ユーザーは常に自分のデータを完全にコントロールすることができる環境を維持することができるのだ。
イーサリアムに代表されるブロックチェーンが目指すのは、分散化によって所有権が民主化された未来、Web3.0の世界である。Web3.0は、個人が自分のデータや資産を完全に所有することができ、中央集権当局による差し押さえなどの心配がない完全に分散化された世界だ。
メタマスクはこの分散化された未来への道をリードするために、常にその機能を拡張し続けている。先述のMetaMask Swapsは、Web3.0の世界を実現する目標の一環ということだ。
メタマスクの課題とリスク
メタマスクはブロックチェーン上のサービスを利用する際に必要となるツールだが、ブラウザの拡張機能としてメタマスクをインストールしなければならないのは、ネット初心者にとってはハードルが高いといえるだろう。
新たなブロックチェーンサービスを利用する際に必ず連携作業が入ることも、シームレスな環境で利用できるサービスと比較すると手間がかかることは否めない。
これはブロックチェーンサービス全般にいえる問題ではあるが、こうした環境が、ブロックチェーン、仮想通貨の世界を世間に浸透させる際の高いハードルとなっている。
また、メタマスクのセキュリティは一般的には高いと評価されているが、ホットウォレットと呼ばれるブラウザウォレットは、常にインターネットに接続されている環境で利用されることから、ハッキングされる可能性がないとは限らない。
シークレットリカバリーフレーズや秘密鍵を厳重に管理しているつもりでも、メタマスクを使っているパソコン自体がウィルスに感染していれば、それらの情報を入力する際にパソコンの側から読み取られ、盗まれてしまうかもしれない。
そして、メタマスクを他のサービスと連携させる際は、連携先のサービスが信用できるかどうかの確認を怠らないようにすべきだ。特に儲かるといった話が先行するような新サービスは、詐欺の可能性もないとはいえない。
中央機関が存在しないブロックチェーンサービスを利用するには、自分自身でよくリサーチをし、自分の判断や行動に責任を負う必要がある。
メタマスクとNFTゲームのThe Sandboxを接続するところ。接続先が本当に公式のThe Sandboxであるか、Fakeではないかを確認してから接続しよう。
メタマスクがカスタマイズ可能に DAppsが進化する可能性
メタマスクは次の段階として、メタマスクエクステンション(メタマスクチームが新機能をメタマスクウォレットに展開する前に実験する機能)をDApps開発者向けに提供する「MetaMask Flask」の準備を進めている。
MetaMask Flaskにてリリースされた最初の機能はSnapsだ。Snapsは、DAppsやWeb3.0アプリの開発者が、自分自身で自由にメタマスクに機能を追加し、カスタマイズできるシステムであり、一般に広く使われているメタマスクから隔離された環境で実行されるプログラムだ。これにより、DAppsの開発者は、現時点でのメタマスクの機能に合わせてDAppsを構築する必要がなくなるため、まったく新しいタイプのDAppsが誕生する可能性がある。
DApps開発者は、Snapsでメタマスクに新しいAPIや機能を追加したり、内部APIを使用して既存の機能を変更したりでき、それをユーザーに提供することも可能だ。
これによってメタマスクがどう変わっていくのかは誰にも予測することはできないが、メタマスクチームは、新たなアイデアによってメタマスクとイーサリアムブロックチェーンを応用した、まったく新しいWeb3.0の世界が構築されることを狙っているようだ。
なお、MetaMask Flaskは開発者向けのツールであり、その機能やAPIは安定しておらず、UXも洗練されていないことなども予め明記されている。開発者以外の利用は推奨されていない。MetaMask Flaskは現在、Google ChromeとFirefoxのブラウザ拡張機能としてのみ利用できる。
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