【識者オピニオン】ChatGPTこそDAO(分散型自律組織)を通した管理が必要だ

　　Guneet Kaur

　　2023年04月06日 15:31

　　【識者オピニオン】ChatGPTこそDAO(分散型自律組織)を通した管理が必要だ

　　ChatGPTはユーザーと会話できる大規模言語モデル（LLM）であり、OpenAIの開発した画期的なAIモデルのひとつだ。この技術には多くの利点があるが、一方でプライバシーや中立性、情報の正確性を確保する規制が必要だとする懸念もある。

　　これらの問題に対処するために分散型自律組織（DAO）が解決策となる可能性がある。

　　まず、ChatGPTの利用に関してプライバシーが大きな懸念事項となっている。ChatGPTがユーザーからのデータを収集して回答を向上させるため、個人が第三者に明かしたくない機密情報が含まれることがある。例えば、ユーザーがChatGPTに金融や医療の履歴を明かすと、その情報は予期しない方法で利用される可能性がある。この情報が不正な方法で取得されると、プライバシーの侵害やさらには個人情報の窃取につながるかもしれない。

　　さらに、ChatGPTはフィッシング詐欺やソーシャルエンジニアリング攻撃などの違法行為に利用される可能性がある。人間の会話を模倣することで、ChatGPTはユーザーに個人情報を明かさせたり、普段は行わない行動を取らせることがある。OpenAIは、これらのプライバシー懸念を解消するために、ユーザーデータの管理と保管に関する明確な方針と手続きを策定することが重要である。DAOは、ChatGPTが収集したデータが分散型で保存され、ユーザーが自分のデータをよりコントロールでき、権限を持つ者だけがアクセスできるようにすることができる。

　　次に、AIチャットボットはプロパガンダや偽情報を拡散するために利用されることもある。これにより、個人やコミュニティに悪影響を及ぼす不公平や不正な結果が生じる可能性がある。バイアスのある回答は、開発者や学習データの偏見を反映してしまうことがある。

　　DAOは、ChatGPTが客観的なデータで学習され、生成された回答がさまざまな企業、学術機関、社会団体の代表者など、幅広い人々によって検証されることを保証できる。ChatGPTが多様な視点からの意見を取り入れることでバイアスの可能性を最小限に抑えることができる。

　　DAOは、既存の社会的偏見を強化したり、新たなものを導入しないように、チェックとバランスのシステムを設けることもできる。たとえば、DAOはChatGPTの回答が公平で偏りのないものであることを確認するための監査手続きを設けることができる。これにより、偏りのない専門家がChatGPTのコメントを検証し、偏見のある事例を指摘することができる。

　　また、ChatGPTには知識の集中化という問題がある。モデルが多くの情報にアクセスできることは多くの点で有利であるが、知識が少数の人々や組織の手に集中することで独占が生じる可能性がある。同様に、人間と機械のみの知識共有が常態化し、個人が集合知に完全に依存するリスクがある。

　　例えば、プログラミングの問題に直面したプログラマーは、以前はStack Overflowに質問を投稿し、同様の問題に遭遇し解決策を見つけた他の人間のプログラマーから回答を得ることができた。しかし、ChatGPTのようなAI言語モデルが普及するにつれ、プログラマーが質問をし回答を受け取ることができるようになり、他の人とのコミュニケーションが減少する傾向にある。これにより、Stack Overflowのようなウェブサイトでユーザー間のやりとりや知識共有が減少し、AI言語モデル内に知識が集約される可能性がある。それは、人間の主体性や知識の生産・流通に対するコントロールを大幅に損なうことになり、将来的に知識が私たちにとってアクセスしにくくなることを意味する。

　　知識の集中化という複雑な問題に対する簡単な答えはない。しかし、これは知識の生産や伝達の分散化戦略が必要であることを強調している。DAOは、より民主的でオープンな情報共有を提供する枠組みを提案し、この問題を解決する上で役立つかもしれない。ブロックチェーン技術とスマートコントラクトを利用することで、DAOは人々や組織が共同で作業し、共有知識に貢献しながら、その知識へのアクセス方法に対するコントロールを高めることができる。

　　最終的には、DAOは、ChatGPTの運用を監督・管理する枠組みを提供し、分散されたユーザーデータの保管、バイアス検証された回答、そして民主的でオープンな情報交換を保証することができる。DAOの活用は、ChatGPTや他のAI言語モデルの使用に関する説明責任、透明性、コントロールを高めるための実行可能な解決策となりうる。AI技術が進歩し続ける中で、倫理的な配慮を優先し、潜在的な問題に対処するために積極的な手段を講じることが重要である。