コインテレグラフは今回業界関係者に取材。ブロックチェーンがいかに『グリーンウォッシング』対策に役立つか、またブロックチェーンが現在環境保護分野でどのように使用されているか探ってみた。
気候変動や環境の持続性への関心が高まる中、多くの組織がこれらの問題に対処するための革新的なソリューションを求めている。
そんな中様々な産業で持続可能性への取り組みを変革する可能性を秘める技術ーーすなわちブロックチェーン技術が注目を集めている。
世界経済フォーラム(WEF)が4月25日に発表したホワイトペーパーでもブロックチェーンが気候変動対策のツールとして取り上げられている。
Digitisation of the VCM is one of the leading use cases for #blockchain innovations in the climate action space.
The “Blockchain for Scaling Climate Action” Paper by @wef explores key examples & use cases, including the Climate Action Data Trust.
— Climate Action Data Trust (@CAD_Trust) April 27, 2023
コインテレグラフは今回業界関係者に取材。ブロックチェーンがいかに『グリーンウォッシング』対策に役立つか、またブロックチェーンが現在環境保護分野でどのように使用されているか探ってみた。
グリーンウォッシング問題の解決
『グリーンウォッシング』とは自社製品を実際よりも持続可能に見せるための誤った広告で、過去数年で悪名が高まっている。ある調査では米国企業幹部の68%が、自社がグリーンウォッシングを行っていると認めている。
Outside, @xrbham are making themselves heard loud and clear on the samba drums
And highlighting @HSBC_UK #greenwashing with their greenwash bath
— Isabella Salkeld (@SalkeldIsabella) May 5, 2023
ハイパーレジャー財団のエグゼクティブディレクターであるダニエラ・バルボサ氏によれば、問題は「グリーン」と主張する企業が本当に持続可能性計画や目標に従っているかどうかを検証することだ。
彼女は実際の行動を追跡・記録するシステムを設置する必要があると考えており、デジタル台帳技術(DLT)がそのための適切なツールであると説明した。バルボサ氏は次のように述べている。
「ブロックチェーンの透明性と不変性を活用することで、企業や業界全体が、炭素クレジットや持続可能な調達などの取り組みを見える化することができる。」
バルボサ氏は信頼性のある記録保持システムが、企業に持続可能なアクションをおこすインセンティブを与え、気候目標の達成と消費者の信頼の構築に役立つと考えている。
一方、チア・ネットワーク(Chia Network)のジーン・ホフマンCEOもバルボサ氏の見解に同意している。ホフマン氏によれば、現在の脱炭素市場のインフラは制約が多くバリューチェーン全体でのイノベーションを促進していない。その結果企業は組織全体での持続可能性の取り組みについて透明性を持つ能力に制約がある。
持続可能性イニシアチブでのブロックチェーンの現在の使用
ブロックチェーン技術のおかげで、企業が持続可能で環境に優しいふりをする日々はもうすぐ終わりを迎えるかもしれない。ブロックチェーンはすでに世界中の組織のさまざまなイニシアチブに浸透しているからだ。
バルボサ氏はコインテレグラフに対し「ブロックチェーンや関連技術を活用した応用が増えている。グリーンファイナンス、持続可能性調査報告、気候会計、サプライチェーンのトレーサビリティなどが含まれている」と語った。
同氏が例にあげたのは『Genesis 2.0』とよばれる取り組みだ。国際決済銀行のイノベーションハブ、香港金融管理局、国連気候変動グローバルイノベーションハブが協力して実施したこのプロジェクトでは、将来の炭素排出量等が計算に入ったデジタル債券のプロトタイプが開発され、ブロックチェーン、スマートコントラクト、および関連技術を使用して追跡、配信、および譲渡が行われたという。
さらに、バルボサ氏はカナダのブリティッシュコロンビア州政府がエネルギー・鉱業デジタル信託(Energy and Mines Digital Trust)のパイロットプロジェクトを立ち上げたことを紹介した。このプロジェクトでは、検証可能な持続可能性報告を構築するために、ブロックチェーンがデータや情報を保護するために使用されている。
さらにホフマン氏は気候行動データ信託(Climate Action Data Trust:CADT)がブロックチェーン技術を活用した最も影響力のある気候イニシアチブであると考えている。CADTは、多国間および政府間組織間で炭素クレジット関連データの信頼を確立することを目指している。このプロジェクトはブロックチェーン技術を使用して、複数の組織間連携に取り組んでいる。
またホフマン氏はカーボン・オポチュニティーズ・ファンド(Carbon Opportunities Fund)の重要性も強調している。このプロジェクトはCADTの基盤を活用しており、炭素クレジットを調達する信頼性のある手段を提供する。ホフマン氏によれば、以前は不透明であった炭素排出クレジット市場の効率と透明性を向上させるという。
脱炭素への取り組みでブロックチェーンを使用することは長期的利益につながるか
脱炭素業界でブロックチェーンを使うことは企業にとっての長期的利益につながるとの声は多い。バイナンスが運営するBNBチェーンのシニアソリューションアーキテクトであるビクター・ゲニン氏は、ブロックチェーンを持続可能性分野で使用する際の最大の利点の1つは、コンプライアンス面だと考えている。
ゲニン氏はブロックチェーンがサプライチェーン全体で商品、サービス、リソースを追跡する手段を提供すると説明した。「これにより環境コンプライアンスを監視し、製品やサービスのライフサイクル全体での持続可能性を確認する機会が生まれる」と付け加えた。さらに同氏は「透明性と説明責任の向上、トレーサビリティ、エネルギー効率、廃棄物削減、組織間での協力的アプローチの創生」など他の利点もあると強調している。
もちろんブロックチェーンは「魔法の解決策」ではない。ただし責任を持って設計され実装されたブロックチェーン技術は、気候行動の取り組みにおいて透明性、説明責任、セキュリティを向上させる基盤またはフレームワークとして機能できる可能性が高い。今後の発展に注目だ。<終>
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