ブロックチェーンのトリレンマは有名だが、DAOのトリレンマのことはご存じだろうか?DAOのトリレンマを理解することは、DAOがなぜ分散化に一足飛びに向かっていけないかを理解する上で重要だ。
著者 Hisashi Oki dYdX Foundation Japan Lead
早大卒業後、欧州の大学院で政治哲学と経済哲学を学ぶ。その後、キー局のニューヨーク支局に報道ディレクターとして勤務し、2016年の大統領選ではラストベルト・中間層の没落・NAFTAなどをテーマに特集企画を世に送り込んだ。その後日本に帰国し、大手仮想通貨メディアの編集長を務めた。2020年12月に米国の大手仮想通貨取引所の日本法人の広報責任者に就任。2022年6月より現職。
ブロックチェーンのトリレンマは有名だが、DAOのトリレンマのことはご存じだろうか?DAOのトリレンマを理解することは、DAOがなぜ分散化に一足飛びに向かっていけないかを理解する上で重要だ。
ブロックチェーンのトリレンマはイーサリアム創設者のビタリック・ブテリンが提唱した概念で、スケーラビリティ、セキュリティ、分散性の全てを同時に成立させることが困難であることを指す。
一方、DAOのトリレンマは以下の通りだ。提唱したのは、元GitcoinのOwocki.Ξthだ。
出典: @owocki 「DAOのトリレンマ」
DAOのトリレンマの三つの軸は、「同意の共有(Shared Consent)」、「行動の共有(Shared Action)」、そして「文脈の共有(Shared Context)」だ。
「文脈の共有」が欠ける場合、「誤った行動(Misdirected Action)」につながる。しかし、文脈を共有するには複雑なシステムの場合は時間がかかるし困難であるため、文脈をあえて飛ばすという判断もあり得る。
次に「行動の共有」が欠ける場合、「正当な不行動(Legitimate Inaction)」になる。合意形成と文脈の共有に時間をかけて行動しない場合、マーケットでは遅れを取るだろう。
最後に「同意の共有」が欠ける場合、「不当な行動(Illegitimate Action)」になる。文脈を一番知っているリーダーシップ層が合意形成を飛ばして行動するパターンだ。結果としてコミュニティのフォーク(分裂)が起きる可能性がある。
DAOのトリレンマが教えてくれることは、文脈、行動、そして同意を全てクリアすることは困難ということだ。言い換えれば、「このプロジェクトは中央集権的だからDAOではない」と結論づける前に、少し考える必要があることを示唆する。ゴールとしての分散化は当然なのだが、今すぐ分散化することより重要なことはあるのだ。
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