イーサリアムは流動性ステーキング・トークンに取って代わられる【オピニオン】

　　Bob Baxley

　　2023年08月01日 08:51

　　イーサリアムは流動性ステーキング・トークンに取って代わられる【オピニオン】

　　我々が気づく前に、流動性ステーキングトークン（LST）がイーサリアムのネイティブ仮想通貨、ETHに置き換わるだろう。LST市場は既に約170億ドルの価値があり、イーサリアムのマージ以降、成長を続けている。LSTが本格的に活動を開始したばかりであるが、ETHに対する優位性はすぐに流動性提供者（LP）に明らかになり、ETHをその王座から引きずり下ろし、新たなLST支配の時代を迎えるだろう。

　　マージ後、ETHはステーキングにより約4%の年間利回りを生み出す能力を持つようになった。この利回りは、ネットワークの活動度、ステーキングされたETHの総量、バリデーターの数、そして最大抽出可能価値といった要素によって決定される。この開発は、ETHが一般的に安定した資産であるという性質から重要だ。多くの仮想通貨はよりボラティリティが大きいため、所有者は利回りとその資産の価格が上昇するか下落するかの両方を考慮しなければならない。一方、ETHは現在、ステーキングと段階的な価格安定性、そして価格上昇からの利回りを提供する。

　　新たにETHをステーキングし、利回りを得る能力があることは、今日ETHを保有している人々が決定を下さなければならない意味を持つ。彼らはETHを提供して手数料を稼ぐことを望むのか、それともそのETHをステーキングして確実な利回りを得る方が良いのか？

　　LSTはLPのためのこのジレンマを解決する。通常のステーキングされたETHとは異なり、イーサリアムのステーキングコントラクトでは流動性がないが、LSTはステーキングされたトークンの固有の価値を解放し、LPに自由に取引でき、分散型金融（DeFi）プロトコル内で担保として利用できる流動的な「レシート」トークンを提供する。LSTがステーキングされた資産を流動的にするため、トークン保有者はETHのステーキング報酬を続けながら、他のネットワークで他の活動に参加する柔軟性を持つ。

　　これは、LPがETHをステーキングして利回りを得る一方で、LSTを使って自動マーケットメーカー（AMM）に流動性を提供できるということを意味する。重要な点として、LSTは通常のETHステーキングよりも大幅に低いエントリーコストを提供するため、新規のオーディエンスや小規模投資家にとって魅力的だろう。

　　LSTがDeFiでETHを置き換えるという議論は明らかだ。ETHをAMMに供給する代わりにLSTを選ぶLPは、約4%のAPRを犠牲にしている。これは、利回りを最大化しようとする人々にとってどのような意味を持つのだろうか？

　　この分野では、確かに「ETHはETHだ」と主張する人々が存在する。それは仮想通貨の世界で第二位のトークンであり、どこにも消えていかない。しかし、仮想通貨の世界は素早く進化する。このコミュニティは常に、利回りをより簡単かつ効率的に得るための次なる技術開発を求めており、結局のところ、LSTが利回りを得るためのより効果的な方法を提供している。

　　LSTへの移行は急速に進むだろうが、現在はまだ非常に初期の段階だ。ETHが初めてアンステーキングできるようになったイーサリアムの上海アップグレードは4月に行われたばかりだ。しかし、LSTは現在の市場シェアが表しているよりもはるかに大きな市場ポテンシャルを持っている。ETHが簡単にアンステーキングできるようになった今、人々がETHのステーキングにより快適になるにつれて、我々は流動性ステーキングプラットフォームの採用が急速に進むだろう。

　　この移行の始まりは既に上海後のステーキングのトレンドで見ることができる。2023年だけでも、リドプロトコルに預けられたETHは490万から800万に増加し、全てのステーキングされたETHの30%以上を占めている。4月中旬にローンチしたスウェルネットワークは既にそのプラットフォームに43000以上のETHがステーキングされている。

　　このシフトは、LSTが分散型取引所で主要な資産となり、最終的には仮想通貨での主要トークンとしてETHを完全に置き換えることを意味するかもしれない。全てのETHが流動性ステーキングプロトコルを通じてステーキングされ、ユーザーが全ての取引やその他の活動をLSTを使って行う時代を迎える「LSTFi」の急速な成長が始まるかもしれない。

　　確かに、ETHはよく知られている資産だ。しかし、「知られている」ということは必ずしも「最善」を意味するわけではない。流動性を提供するかステーキングするかという金融的な機会を放棄する決定を下す前に、DeFiの人々は新興のLSTエコシステムを一度試してみるべきだ。今が最後の本当のチャンスで、投資の影響を最大化することができる。

　　最終的に、LSTの支配は業界にとってプラスとなるだろう。多くの仮想通貨ユーザーは「仮想通貨の冬」の間に去り、新規ユーザーからの関心を引きつけるのが目立って遅くなっている。LSTは新規ユーザーを引き付けるためのよりアクセスしやすいオプションであり、この業界が必要とする新たな息吹となる可能性がある。

　　ボブ・バクスリー氏はマーベリックプロトコルのコアビルダー。以前、大規模な商業および連邦エンティティを無線周波数ベースのサイバー攻撃から保護するサイバーセキュリティファンド、バスティーユネットワークのCTO兼共同創設者だった。彼はジョージア工科大学から電気工学の博士号を取得し、DARPAスペクトラム協力チャレンジを含む数多くのプログラミングコンテストで優勝している。