米国債の信用格下げ、仮想通貨への影響は？

　　Marcel Pechman

　　2023年08月04日 08:45

　　米国債の信用格下げ、仮想通貨への影響は？

　　8月1日、金融界で重大な出来事が生じた。信用格付け機関フィッチ・レーティングが、米国債の信用格付けを最高位のAAAからAA+へと引き下げたのだ。この格下げは、米国政府の財政責任への信頼が揺らいでいることを示している。

　　格下げは投資家たちを慎重姿勢にさせ、多くが株式、銀、石油、長期債券といった資産から資金を引き揚げた。代わりに、彼らは現金や短期金融商品へと投資を移した。これらは不確定な時期において、より安全な選択肢と見なされるからだ。

　　上記のチャートから明らかなように、フィッチが米国政府の信用格付けを引き下げるという決定に対する反応は、商品、債券、株式を問わず、幅広い影響を及ぼした。これにはビットコイン（BTC）を含む各種の金融機関と投資ポートフォリオに影響があるだろう。

　　トレーダーたちは今、ビットコインのデジタル的な希少性と検閲に対する耐性が、世界最大の経済体の信用格下げによって引き起こされた広範な「安全への逃避」の動きからの「避難所」を提供できるかどうかを考えている。

　　格下げは市場に僅かな影響

　　5月のムーディーズ・アナリティクスの報告書は、米国債の格下げが金融部門の格下げを引き起こす可能性を示唆していた。注目すべきなのは、フィッチとS&Pだけが米国の債務をAA+と評価しており、ムーディーズは依然として安定した見通しをもとにAAAと評価している点だ。

　　興味深いことに、クレジット・デフォルトスワップが示す米国の主権債務に対するデフォルト保険のコストは、格下げ後も大部分が安定していた。これは、このような重要なニュースを受けたにも関わらず驚くべき展開だ。

　　この金融商品は債務デフォルトのリスクから保護するもので、保険契約と同様に働き、投資家は保険料を支払って債務発行者（この場合は米国政府）がデフォルトした場合の補償を受ける。

　　この安定性は、投資家が格下げの直接的な影響についてはまだパニックに陥っていないことを示している。可能な理由としては、米国債券が全世界で最も安全な投資の一つと見なされていることが挙げられる。それは米国政府によって保証されており、発行者は指定された満期日に債務を返済することを保証しているからだ。

　　最近の日々の利回りの変動は、5年物国債の利回りが過去2週間にわたり一貫して上昇していることを考えると、それほど重要ではないように見える。これは米国債務の管理への投資家の信頼が侵食されていることに関連しており、より高い利回りを求める需要を引き起こしている。

　　米国債の利回り動向とは別に、下落する米ドルインデックス（DXY）――これは米ドルの価値を他の通貨と比較するもの――は問題を引き起こす可能性がある。これが伝統的な資産への信頼を低下させると、投資家は代替の価値保存手段を求めるかもしれない。これによりビットコインの魅力が高まる可能性がある。

　　過去2週間で、DXYは99.50から102.60へと上昇しており、投資家の感情が変化している可能性を示している。彼らはおそらく米国債、株式、商品から離れて現金を求め、不確定性の中でドルの魅力を強調している。

　　ビットコイン価格は短期的にはネガティブな見通し

　　米国債のクレジット・デフォルト・スワップの回復力と、DXYによるドル高は、投資家が市場の混乱を見越して現金保有を増やしている可能性を示唆している。

　　その結果、ビットコインは米国政府の債務プロファイルの格下げからはすぐに上昇しないかもしれない。流動性への最初の逃避は、市場の乱高下の初期に分散型資産の利点を見落とすことが多い。

　　ビットコインのデジタルの希少性と固定供給を考えると、現金が減価する可能性のある政府債務が拡大する中で、ビットコインは貴重な資産として際立っている。その結果、投資家はますますビットコインを安全な避難所と考えるようになり、その非中央集権的な性質により検閲に強い強固な資産クラスと考えるようになるかもしれない。