仮想通貨ベンチャーの資金調達　業界関係者の長期的見通しは前向き

　　仮想通貨価格が依然として低水準で推移する中、ベンチャーキャピタル（VC）の資金調達額も2021年以降で最悪の四半期を記録した。それにもかかわらず、この業界の幹部は業界の長期的な可能性について楽観的な見方を続けている。

　　仮想通貨データプラットフォームのRootDataは、2023年第2四半期は仮想通貨関連の資金調達の面で最悪のパフォーマンスを記録したと強調した。559の資金調達ラウンドで126.2億ドルが調達された2022年第1四半期と比較すると、2023年第1四半期は292ラウンドで約21億ドルであり、この分野に流入するVC投資は83％減少した。

　　ベンチャーキャピタルの資金の流れが減速しているにもかかわらず、この分野で働く専門家は、仮想通貨には長期的な可能性があるという強い信念が依然としてあると主張する。

　　Web3アクセラレーターのアウトライアー・ベンチャーズで資金調達の責任者を務めるグヴァンツァ・チュクアセリ氏はコインテレグラフに対し、ベンチャーキャピタルを巡る活動は活発化していると語った。チュクアセリ氏によると、これは投資家がブロックチェーンの長期的な可能性を強く信じていることを示唆しているという。

　　「私たちは、ブロックチェンジ・ベンチャーズとデカソニックが共同主導したMawariの最近の650万ドルのシードラウンドや、Zincの500万ドルのシリーズAなど、私たち自身のポートフォリオを見れば、厳しい状況にもかかわらず関心があることがわかる」とチュクアセリ氏は説明した。

　　最近の低迷にもめげず、このセクターのアーリーステージ企業を支援し続ける投資家もいるようだ。「私たちは楽観的になる理由があると考えている」という。チュクアセリ氏はまた、人工知能（AI）に焦点を当てたスタートアップ企業への関心の高さを指摘し、AIにフォーカスした仮想通貨プロジェクトのfetch.aiが今年初めにDWFラボから4000万ドルの資金提供を受けたことを強調した。

　　ドバイを拠点とするベンチャー企業クリプト・オアシスの共同設立者であるサクル・エレイカート氏は、景気後退がもたらしたマイナス面にもかかわらず、現在の状況から得られるプラス面はまだあると考えている。エレイカート氏は次のように説明する：

　　「ポジティブな面では、この変化により、最も有望なプロジェクトだけが確実に資金を受け取ることができる、より目の肥えた選別プロセスが可能になった。厳しい時代だからこそ、勝者が明確になり、真に革新的なベンチャーとそれ以外のベンチャーを分けることができるようになった」

　　前向きな見通しがあるとはいえ、エレイカート氏は資金不足のために苦境に立たされているプロジェクトに共感を示した。「資金調達の機会が乏しいために消滅の危機に直面している数多くの企業を目の当たりにして、落胆している」と彼は語った。また、エレイカート氏はコインテレグラフに対し、このような状況はプロジェクトの戦略的意思決定の重要性を浮き彫りにしていると語った。

　　チュクアセリ氏と同様に、エレイカート氏もAIに特化したプロジェクトが依然として巨額の投資を受けていることを強調する。Inflection AIの13億ドルの資金調達ラウンドを引き合いに出し、同幹部はAIスタートアップの中でチャンスが拡大していると話す。

　　一方、仮想通貨決済プラットフォームOobitのフィリップ・ロード社長は、起業家は持続可能なビジネスモデルと明確な収益源を持つ企業の構築に集中する必要があると考えている。ロードによれば、そうすることでVCは彼らのプロジェクトに投資せざるを得なくなるという。

　　「現在、私たちは高金利のサイクルにあり、今後3年から5年は高金利が続くと予想されている。そのため、企業は “どんな犠牲を払ってでも成長する ”モデルを避け、時の試練に耐える強固で持続可能な事業を構築することに集中すべきだ」。

　　ロード氏はまた、VCモデルがAIのために変化を経験していることを強調した。「AIが本格的に導入されれば、企業のバーンレートは劇的に低下する可能性がある」という。ロード氏はまた、AIのおかげで「文字通りスタッフなしで」年間2500万ドル以上を稼ぐ単独起業家が現れるだろうと予測した

　　翻訳・編集 コインテレグラフジャパン